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調査の概要


 本調査の目的は、日本全国の博物館などの史料保存機関が企画した展示に際して出版された図録を対象に、図録に掲載されている江戸城本丸御殿の平面図のデータを収集し、研究資源として提供することである。図録を調査対象としたのは、平面図という視覚的史料を見るにあたって、最も手軽であるだろうと考えたためである。
 ただし、単年度での調査には限界があるため、本年度は東京大学史料編纂所図書室所蔵の図書類に限定して調査した。

 調査は以下の手順によって行った。
①東京大学史料編纂所のホームページを開き、「図書室の利用」(https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/tosho/tosho.html)で「史料編纂所」を選択し、ボックス内に「図録」と入力して検索する。
②検索結果から、江戸城関連の図面が掲載されていると思われる図録を、下記キーワードなどをもとに抽出した。
  選定キーワード例:江戸城、徳川、忠臣蔵、大名や藩の名称
③選定した図録を、東京大学史料編纂所図書室の書庫で1点ずつ確認した。
④確認した結果、江戸城本丸御殿の平面図が掲載されている図録が少なすぎたため、適宜、選定した図録が配架されていた書架周辺の棚にある図録類についても念のため調査した。
⑤図録調査と並行して、大名家および旗本旧蔵史料目録の調査を行った(吉川紗里矢担当)。互いの調査が進むにつれ情報が重複することが多くなったため、適宜情報を共有するようにした。


 図録調査の結果は「図録掲載の本丸図一覧」に示したとおりである。
 江戸城本丸御殿平面図を図録に掲載しているのは、江戸城に関わる展示を行ったことがある江戸東京博物館、赤穂事件関連史料を収集する龍野市立歴史文化資料館など、特定の博物館に限られた。このことから、江戸城関連の情報を図録から収集する際は、前述した特定の機関に絞って調査するのがよいことが判明した。
 また、図録調査と並行して行った目録調査(本書第Ⅱ部2参照)と対照させて考えると、目録には掲載されているものの、図録に掲載されている史料数は格段に少ないという事実も明らかとなった。
 現在、全国の歴史資料保存機関において、絵図のデジタルデータによる公開が進んでいる。このことは吉川が担当した所蔵目録による調査からも確認することができる。しかし、「江戸城」という特定のものについて情報が一元化されるには、未だ時間を要する。
 今後は、本研究会および拠点研究の成果を最大限に活用し、一枚でも多くの江戸城本丸御殿の図面をデジタルカメラ等で撮影し、目録ではなく視覚的に見ることができるような研究資源の開発が必要である。

(小粥祐子)