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研究紹介

2012年度~2015年度科学研究費補助金基盤研究(C)近代化模索期の「国史」編纂と地図作成―赤門書庫旧蔵地図の研究
(研究代表者 東京大学史料編纂所・杉本史子)
(課題番号:24520737)

 この共同研究は、明治政府の歴史編纂・地理編纂所機関が収集あるいは作成してきた「赤門書庫旧蔵地図」を整理し、関連資料とあわせ分析することにより、「近代化模索期」を検討することを目的としています。
 「近代化模索期」には、幕末開国以降の新秩序・政治体制模索の時期と、いわゆる新政府による近代国家との両方を含めています。維新変革は、国家・社会のドラスティックな変革であるとともに、新政府の中では旧幕臣の実務聡・技術が活用される面をもっていました。断絶と継続、革新と止揚をともに視野に入れ、近代化の問題にアプローチしたいと思っています。

【赤門書庫旧蔵地図とは】
 明治政府以来の歴史編纂・地理編纂所機関は、相互に密接な関係を保ちながら、度重なる組織変遷を重ねてきました。「赤門書庫旧蔵地図」とは、そのなかで形成されてきた地図群であり、煉瓦造りの東京大学赤門書庫のもっとも奥に、いわばタイムカプセルのように保管されてきました。2010年の赤門書庫所轄移管に伴い、他の文字史料群とともに搬出された、膨大な未整理地図群です。これを整理・研究し、すでに東京大学史料編纂所で公開中の特殊蒐書「内務省引継ぎ地図」「内務省地理局文書」などとあわせ検討することが待たれています。

 現在の世界地図は、帆船時代の海図を土台としています。赤門書庫旧蔵地図には、貴重な海図類は多数含まれていることがこれまでの調査で明らかになっています。「近代化模索期」の地域権力や国民国家国家群による具体的な海域把握の具体像を問い直す可能性を秘めています。
 また海図・陸図に書き込まれた、測量・作図・描画の技術者や出版情報は、「近代化模索期」を実際に支えた人材・技術・組織解明の基礎データとなることが期待されます。