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東京大学史料編纂所

 東京大学史料編纂所(以下、史料編纂所)は、江戸時代の塙保己一の和学講談所の事業、明治政府の修史 事業の流れを継ぐ。明治21 年(1888)帝国大学(現在の東京大学)に移管された。日本史史料の編纂と研 究を行うようになった。戦後は東京大学の附置研究所として現代に至る。  本プロジェクトで調査したのは、史料編纂所が所蔵する史料群(特殊蒐書)のうち島津家文書15 点、維 新史料引継本8 点・内務省引継地図5 点、その他の史料3 点である。
 「島津家文書」は、薩摩島津家に代々伝来してきた武家文書の白眉である。700 年に及ぶ武家文書を伝え ている唯一の文書群である。平成14 年(2002)度に国宝に指定された。島津家文書には、島津斉彬の養女 であり13 代将軍家定の正室となった篤姫(天璋院)に関わって、江戸城大奥の図面が含まれており、今回 はそれらを中心に調査した。
 「維新史料引継本」は、 第二次世界大戦前に文部省維新史料編纂会が収集した、明治維新に関する史料約 2 万点からなる。維新史料編纂会は、明治維新期に関する史料の収集と編纂を目的に、明治44 年(1911) 勅令によって設置された。同会の事業は太平洋戦争のため中断され、戦後、東京大学史料編纂所へ移管された。 その際、引き継がれた稿本や図書、資料類である。維新史料引継本に含まれる江戸城図・江戸図を調査した。
 「内務省引継地図」は、史料編纂所が旧内務省から引き継いだとされるものを中心とする地図群である。 維新政府の地誌編集事業を担った太政官正院地誌課は、内務省地理寮を経て、明治8 年(1875)に修史局 に合併された。その後地誌事業は、明治10 年(1877)内務省地理局に移管、同23 年(1890)帝国大学に 移管される。翌年、先に帝国大学に移管されていた編年史の事業と地誌事業をあわせ、史誌編纂掛が設置 された。この史誌編纂掛が、明治25 年(1895)年史料編纂掛、昭和4 年(1929)史料編纂所と変遷する。 本地図群はこのような歴史に由来するものと考えられており、便宜上、この地図群を「内務省引継地図」と 総称している(ただし、旧内務省所蔵以外の地図を含む)。この中に含まれる江戸図を調査した。
(佐藤麻里・東京大学史料編纂所学術支援専門職員)